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スペシャルティコーヒー辞典



 
 

「劣化」を防ぐ!コーヒー豆の保存方法

 

コーヒー豆の画像
Photo by Stirling Noyes – Coffee Beans(2008) / CC BY 2.0


お客様からのご質問が多い「コーヒー豆の保存方法」について、当店のオススメをご紹介します!結論から書いてしまうと、守るべきは下記の3つだけです!
 

  • 乾いたタッパーなどの密閉容器に入れる
  • 温度変化の少ない、涼しい場所に保管する
  • 2週間〜3週間程度で飲みきる →飲みきる量しか買わない


びっくりするほどシンプルです。たったこれだけの方法で、上手にコーヒーを保存できます。
また、よく言われる「冷蔵庫・冷凍庫保存」はオススメしません。うまくやらないと、逆にコーヒー豆を劣化させる原因になってしまうからです…。

焙煎豆に訪れる「変化」は「劣化」


コーヒー豆は、焙煎した直後から急激に「変化」します。焙煎直後は風味豊かで、コーヒー抽出時には粉がよく膨らみます。しかしある程度の時間が経過すると、豊かな風味が抜け、抽出時に粉が膨らまなくなります。粉が膨らまなくなると、お湯を通した時にコーヒー豆の組織が開きにくくなるため、抽出効率が悪くなり、良いコーヒーを淹れることが難しくなります。


この焙煎豆に訪れる「変化」が「劣化」と言われるのは、そのためです。
 

「劣化」の3タイプ


劣化は3つのタイプに大別されます。このあたりは、『コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか』(旦部幸博(著)/ ブルーバックス)に詳しく説明されているので、その部分を引用します。
 

A ステイリング:焙煎時に生じたクロロゲン酸ラクトンやキナ酸ラクトンは水分子と反応すると容易に加水分解されてクロロゲン酸やキナ酸に戻り、pHが低下してすっぱくなります。水分が多いときのみ生じる反応ですが進行は早く、ホットプレートで保温しているコーヒー液なら数十分、焙煎豆が吸湿したときにも常温で1〜2日で違いがわかるくらいに変化します。

B 香りとガスの損失:焙煎した直後から、コーヒー豆からは炭酸ガスと一緒に香り成分が抜けていきます。(中略)またガスが抜けた豆はお湯をかけても膨らみにくく、豆の組織が「開きにくく」なるため、成分の抽出効率が悪くなります。水分が少ない条件下ではもっとも早く生じる劣化で、常温なら10〜15日で違いがわかるくらいに変化します。品質重視の自家焙煎店で「おいしく飲めるのは焙煎後2週間以内」と言うのはこのためです。

C 酸敗:油脂分を構成する脂肪酸が空気酸化を受けると不飽和度(分子中の多重結合の割合)の高い脂肪酸になり、それがさらに酸化されると炭素数6〜9程度の低脂肪酸に分解され、油の傷んだ嫌な臭い(酸敗臭、ランシッド)とpHの低下をもたらします。これが酸化による劣化ですが、進行は意外に遅く、違いがわかるくらいに変化するには常温で7〜8週間かかると言われています。

コーヒーの科学 「おいしさ」はどこで生まれるのか(旦部幸博(著)/ブルーバックス)


よく劣化したコーヒーを「酸化してしまった」と言いますが、酸化が関わるのは、正確にはCの酸敗だけです。
 

コーヒー豆の劣化への対処法


コーヒー豆の劣化を防ぐには、上の3つの劣化を防ぐ必要があります。つまり、吸湿を避け(A)、ガスが抜けるのを防ぎ(B)、酸化を防ぐ(C)ことができれば、コーヒー豆は劣化せず、長い間楽しむことが出来ます。

Cの酸敗は2ヶ月後から訪れるので、よっぽど長期保存を意識していない限り無視しても大丈夫です。大事なのは、Aの吸湿と、Bのガス抜けです。

Aの吸湿は、密閉容器に入れる、高温多湿を避け温度変化の少ない所に置く、濡れた容器やスプーンなどを使わない等で、防ぐことができます。

Bのガス抜けを防ぐのは難しいです。常に完全な気密容器に入れておけば良いのですが、現実的ではないです。この劣化は起こるまでに2週間〜3週間猶予があるので、防ぐことは目指さず、起こる前に消費してしまうというのが賢い方法です。


以上をまとめると、当店がオススメするコーヒー豆の保存方法は次のようになります。
 

  • 乾いたタッパーなどの密閉容器に入れる
  • 温度変化の少ない、涼しい場所に保管する
  • 2週間〜3週間程度で飲みきる →飲みきる量しか買わない


ミルやグラインダーの購入も劣化したコーヒーを飲まないための手段のひとつ


コーヒー豆は、粉の状態より豆の状態のほうが(吸湿も、ガス抜けも)劣化しにくくなります。豆のままのほうが、表面積が小さいからです。ミルやグラインダーを導入し、コーヒーは豆の状態で購入するようにして、淹れる直前に挽くようにすれば、コーヒーを楽しめる期間は伸びます。
 

オススメしない冷蔵庫・冷凍庫保存


「コーヒー豆は冷蔵庫・冷凍庫で保管」と聞いたことはありませんか? 当店では、その方法はオススメしません。


確かに温度が低い状態だと劣化のスピードは遅くなります。問題なのは、その冷えた豆を冷蔵庫から取り出すときです。冷えた豆が、その豆よりも温かく湿度が高い空気に触れると、一気に吸湿してしまいます。吸湿を防ぐためには、冷蔵庫から豆を容器ごと取り出し、豆の温度が室温と同程度になるまで待ってから容器を開ける必要があります。よっぽど長期保存をするためならまだしも、頻繁にコーヒーを飲む人が、毎回そのようにすることは、現実的ではないです。


また、コーヒー豆は臭い移りが激しいです。容器の蓋がしっかりしまっていないと、冷蔵庫にある他の食べ物の臭いが、簡単に移ってしまいます。冷蔵庫・冷凍庫に入れる場合は、容器の密閉度も大事になります。
 

オススメしない真空パック


最近は、家庭でも簡単に真空パックできる器具が出回っています。肉などを保存したいときには良いと思いますが、焙煎したコーヒー豆は避けましょう。焙煎したコーヒーはガスを出し続けるので、真空パックした袋がパンパンになってしまいます。(ただし焙煎前のコーヒー生豆は別です。生豆は真空パックすることで、鮮度を保つことが出来ます。)
 

劣化してしまったときの一工夫


コーヒー豆が劣化してしまうと、抽出時にコーヒーの粉が膨らまなくなり、抽出の難易度が上がります。例えばハンドドリップをするときに粉が膨らまないと、ドリッパーの下部に粉がたまって目詰まりを起こしたり、雑味の多いコーヒーになってしまいます。
 

そんな時にできる工夫が、普段より高い温度での抽出です。当店では、だいたい83℃程度の湯温での抽出をオススメしていますが、もし劣化した豆を使いたいときは、93℃以上で抽出してみましょう。膨らみにくかった粉が多少膨らみ、うまくコーヒーが淹れられると思います。ただし焙煎直後のコーヒーで淹れた場合と比べ、風味は変化します。
 

逆に、新鮮な焙煎豆を高温で淹れようとすると、ガスが勢い良く吹き出しすぎて粉の層に穴が空いてしまい、うまくお椀のような形を維持できません。


余談ですが、サードウェーブ系の超浅煎り豆は、焙煎から日が経っていなくても90℃以上の湯温で淹れます。浅煎り豆はそもそも膨らみにくいためです。また、そもそも膨らませることは意識せずに、プアオーバー(ポアオーバー)という淹れ方をすることもあります。
 

ガス抜けは本当に劣化か


コーヒーは嗜好品です。美味しいか美味しくないかは、個人の趣味です。あえて焙煎豆を寝かせ、エイジング(劣化とは言わない)させてから飲むという作法もあります。


またエスプレッソに用いるコーヒー豆はある程度ガスが抜けていないと上質な泡(クレマ)がうまく形成できないため、あえてガス抜けさせた豆を使うことがあります。


吸湿や酸敗は悪い劣化だと思いますが、ガス抜けは、コーヒーの違った表情が見えてくるので、必ずしも劣化と言い切れない部分があります。
 

まとめ


守っていただきたいのは3つだけ!当店がオススメするコーヒーの保存方法は以下になります。
 

  • 乾いたタッパーなどの密閉容器に入れる
  • 温度変化の少ない、涼しい場所に保管する
  • 2週間〜3週間程度で飲みきる →飲みきる量しか買わない